平成17年度 地球環境市民大学校
環境保全協働コーディネーター養成講座 事業実施報告
持続可能な社会を創造していくためには、各主体間のパートナーシップの形成が不可欠です。具体的には、行政、市民、企業などがコミュニケーションを深め、相互にパートナーであることを理解・認識して取り組みを促進させなければなりません。
このような状況のもと協働コーディネーターの役割の重要性が高まっています。
 協働の社会的役割や地域の問題解決の事例などから、協働コーディネーターのミッションや活動を進めて行くための手法などを学ぶ講座を10月28日(土)29日(日)11月26日(土)の3日間にわたり開催しました。
 主催は独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金、企画・運営は特定非営利活動法人 宮崎文化本舗により実施いたしました。
1.実施概要
 本報告書は、独立行政法人環境再生保全機構のご依頼により、特定非営利活動法人宮崎文化本舗が企画・運営した『地球環境市民大学校「環境保全協働コーディネーター養成講座」』の実施内容を取りまとめたものである。
 本事業では、宮崎・鹿児島・大分の3県で活動する環境NGO・NPOに広く参加を呼びかけ、協働の社会的役割や地域の問題解決の事例などから、協働コーディネーターのミッションや活動を進めて行くための手法などを学ぶことを目的として実施した。
 以下、事業の概要を示す。

【事業件名】『地球環境市民大学校「環境保全協働コーディネーター養成講座」』

【委託者】独立行政法人環境再生保全機構
      〒212-8554神奈川県川崎市幸区大宮町1310番ミューザ川崎セントラルタワー8F        TEL:044-520-9609

【受託者】特定非営利活動法人宮崎文化本舗
      〒880-0805 宮崎市橘通東3丁目1番11号アゲインビル2F TEL:0985-60-3911

【実施場所】宮崎県立図書館2F 研修ホール
       〒880-0031 宮崎市船塚3-210-1 TEL 0985-29-2911

【実施期間】平成17年10月29日(土)・30日(日)11月26日(土) 午前10時〜午後4時

【実施目的】環境保全に関する知識、技術の向上を図ろうとする環境NGOスタッフや、環境保全活動に関心のある市民及び行政職員向けに、協働の社会的役割や地域の問題解決の事例などから、協働コーディネーターのミッションや活動を進めて行くための手法などを学ぶことを目的として開催いたしました。

【実施内容】(1)環境保全協働コーディネーター養成講座の企画・立案
        (2)実施予算書の作成
        (3)講師の手配
        (4)会場の手配
        (5)関係者案内作成及び参加者募集
        (6)参加者リスト作成
        (7)関係者との連絡調整
        (8)講座の実施
        (9)参加者アンケート及び内容評価
        (10)「委託業務報告書」及び「委託費精算報告書」の作成
【実施体制】特定非営利活動法人宮崎文化本舗
      〒880-0805 宮崎市橘通東3丁目1番11号アゲインビル2F TEL:0985-60-3911
      企画・運営 石田 達也(代表理事)
      運営補助  高妻 孝光(職員)
              谷口実智代(職員)
2. 実施までの経緯 
  本事業の打診が独立行政法人環境再生保全機構より平成17年6月にあり、7月に詳細を詰めた後、委託元担当者の田中氏と打合せを経た後、企画書を作成。電子メールでのやりとりを経た後、独立行政法人環境再生保全機構の承認を得て、この企画書に案内文を添え、宮崎・鹿児島・大分の環境NGO・NPO団体、約600団体に送付し告知を行った。
 その結果、38名(22団体)の参加申込(宮崎市内30名・宮崎市外5名・宮崎県外3名)であった。
 会場については、「宮崎県立図書館2F 研修ホール」を決定し、事前打ち合わせ等を含め延べ5名の職員が事前の打ち合わせ、会場下見等を行った。
 一般の告知に関しては、平成16年8月1日に委託元の承認を得た後、チラシを25,000枚作成し、企画書を送付したNGO・NPO団体に送付するとともに、宮崎県内の自治体の環境関係の部署に20枚ずつ送付。あとは宮崎市内を中心に市民活動の中間支援組織等に配布を依頼した。
 9月6日に宮崎に上陸した台風14号の風雨は、宮崎県内に未曾有の災害をもたらし、委託元から参加者の減少などを懸念し、日程の変更などの打診もあったが、講師として依頼していた川北氏のスケジュールの再調整が困難なこともあり、当初の予定通り10月29日から実施することとした。
 事業の詳細については地球環境基金の平田氏が担当することになり、当日の進行内容に関しては、開催2日前まで電子メール及び電話で打ち合わせを行った。
3. 会場設営・準備について
会場の設営は、開催日前日の平成17年10月28日及び11月25日に当法人スタッフ3〜4名が参加し、下記の準備を各1時間程度行った。
○ 看板の設置。
○ プロジェクター等の備品等の設置。
○ 受付の設営。配布資料の整理。

講座当日は委託元の地球環境基金部 企画振興課長の山田氏と担当者の平田氏が会場に来場し、その場で、当法人の責任者である石田が進行に関する詳細を協議・決定した。
4. 当日の運営に関して
【講師の選定及び企画内容】

 講師に関しては、「協働」というテーマをわかり易くかつ深く受講生に伝えることのできる人材を講師候補者として3名ほどリストアップ。その中でも最も私どもの意思を掌握し、かつスケジュール的にも対応できる「IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所」代表・川北秀人氏に打診。承諾いただいた上で、メール上で企画を川北氏と確認しあって企画の概要及びスケジュールを決定した。
 以下は講師の川北氏のプロフィールである。
川北秀人(かわきた ひでと)氏

64年大阪生まれ。87年に京都大学卒業後、(株)リクルートに入社。国際採用・広報・営業支援などを担当し、91年に退職。その後国際青年交流NGO「オペレーション・ローリー・ジャパン」の代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。NPOや社会責任・貢献志向の企業のマネジメント、環境・社会コミュニケーションの推進を支援している。
【1日目・平成17年10月29日(土)】
 初日は宮崎県内外から38名の参加があった。進行を当法人の代表である石田がつとめ、先ず初めに委託もとの独立行政法人 環境再生保全機構 地球環境基金・基金部・企画振興課長である山田秀明氏が主催者代表のあいさつと本事業の概要説明を行った。

主催者あいさつをする山田課長
 引き続き川北氏の講義「協働を生み育てるポイント」に入り、
(1) 相乗効果を確認する
(2) 基本原則を定める
(3) 1対1から、多対多へ
(4) 原則からプロセスへ
(5) 浅い協働から深い協働へ
(6) 戦略性のない協働から、戦略を明示した協働へ
(7) 基準のない協働から、基準を明示した協働へ
という大きな流れで基調講演を行った。「協働」の定義という基本的な考え方から、全国各地での様々な事例を交えながらの講演で、初めて「協働」という言葉に触れる参加者にも分かりやすい内容の講演であった。

川北氏の講義の様子
 昼食を挟み午後はグループワークを行った。
「NPOとの協働を生み、育てるプロセスをつくる」というテーマで先ず「協働コーディネーターに不可欠な資質」とはどんなものかという内容でグループワークを行い、それぞれ5つ以内にまとめ発表した。

「協働コーディネーターに不可欠な資質とは?」を発表する受講生の様子
Aグループ Bグループ Cグループ Dグループ Eグループ
@人間を好きな心 @信頼される人間性 @共感のできる
能力
@信頼できる
人柄
@人間性
A対話能力
 ・聞き上手
 ・受け入れ幅
  が広い
 ・ユーモア、
  機知
A意見を引き出す
聞き方
A信頼に裏づけ
られた人脈
A企画力 A調整能力
B知識と経験 B説得力 B話を整理して
議論を進める力
B知識と情報 B表現力
C理論的判断 Cその気にさせる
行動力
C落しどころ見
つけ提示できる
C説得力 C進める力
D行動力・
  実行力
D評価力 D発想力がある D発想の転換
ができる
 次に取り組んだ内容は「協働事業の企画立案」というテーマで、行政に協働事業を提案するという内容であった。現在、参加者が課題としてとらえている問題を企画書として作り上げ、行政の首長(担当者)にその企画をプレゼンテーションすることをロールプレイ形式で行うという内容であった。

企画案を考える受講生
 見本として講師が提示した企画書の大まかな構成は下記の通りである。
@ 企画書鑑文・提案のタイトル
A 団体の概要
B 現状の問題点であるデータ及び問題点を放置した場合の将来の予測
C その原因と背景
D 課題を解決するための事業の提案理由
E 具体的な事業の内容@
F 具体的な事業の内容A
G 提案する事業実施のスケジュールと役割分担
H 予算案
I 最終的な提案のまとめ(○○さんに○○をして欲しい)
 以上10項目を、1項目ごとにA4用紙ヨコ1枚に箇条書きでまとめ、10枚の企画書を作り上げる。
その企画書を使って、市民団体が行政に「協働事業」を提案してみるシュミレーションを行うというワークを2日目に行えるよう個人ワークを実施した。
 初日の講座は、時間内でできるところまでワークを行い翌日プレゼンできるようにというところまで行い終了した。
 なお初日の講座終了後、参加者の中で希望する者のみ講師を囲んでの交流会を実施した。

【2日目・平成17年10月29日(日)】
 
 2日目は、参加者が27名と減少。事前に申込があって当日キャンセルされた方、当初より仕事のため参加できない旨を伝えていた方など欠席者が10名以上出た。
 初日に出された宿題を終えてきた受講生は5名。各グループに別れ、  「プロセスと提案をロール・プレイングで確認する」作業を行った。協働事業の企画書を完成させた受講生が行政に対してプレゼンを実施するというロールプレイングを実施。行政職員が市民団体として、知事や市長を演じる市民に対しプレゼンテーションを行ったりという日常の立場が逆転するシュチエーションも見られた。また提案された協働事業に対し、内容やプレゼンの手法に対しグループ内でコメントしあい、プレゼンテーション能力を高めるグループワークとなった。

市長(?)に対して協働事業を提案する市民団体を演じる参加者
 午後からは、講師の川北氏により、公園の管理を題材とした「協働を深めるプロセスづくり」と題した講義を行ったのち、グループワークで、協働のパートナーとなりえるそれぞれの主体が今後どのようなスケジュールで協働を推進していく流れを作るか?という作業を下の表を基本とし作成してみた。…の部分に各セクターが、その年度にどういったことをしなければならないかということを箇条書きで表す作業に取り組んだ。
05年度 06年度 07年度以降
行政 全庁的に
…………
…………
各担当で
…………
…………
全庁的に
…………
…………
各担当で
…………
…………
全庁的に
…………
…………
各担当で
…………
…………
企業 …………
…………
…………
…………
…………
…………
市民・NPO 各個人が
…………
…………
団体が
…………
…………
各個人が
…………
…………
団体が
…………
…………
各個人が
…………
…………
団体が
…………
…………
05年 06年 07年以降
行政 全庁的に 全庁的に 全庁的に
ニーズの的確な把握 人事配備 検証と評価
関係機関との連携強化 協働窓口の設置 各担当で
職員の「協働」の研修の充実 協働のルール・ガイド
ラインの作成
NPOの活動内容の限界を知る努力
事業が協働に適するかの
検討
協働のコーディネーター
の設置
情報公開や発信は?
窓口の明確化 評価基準づくり NPOの活動内容の限界についてはもう少し早い時期では?
各担当で 構想から市民との協働の検討 NPO活動については05年より知る必要はないか?
市民サービスにつながるか 各担当で
コストダウンだけではなく市民の満足を目指す 何故やるのかの目的の共有
協働の緊急性の高い項目
を全庁横断で100件リスト
アップといった課題の特定を急ぐべきでは?
相手を選ぶ明確な基準の作成
協働する相手を十分に把
握私見にかたよらない人間関係
法的な関係確認
協働コーディネーターは行政職員がやるの?
コーディネーターの育成は必要!!賛成です。
企業 ニーズの十分な把握 人材育成 企業イメージを落とすことがないか?(検証)
協力体制の確立 相手のことをよく知る 利益が上がるか?
利潤を地域に還元する意識をもつ 戦略をもった選定基準をもつ 会社の理念とあっているか確認
どんな社会貢献を目指すか明確にする 直接的な広告宣伝効果を意識しない 資金・技術力・人の提供
企業・NPOともに協働に
対する知識研修が必要では?
会社全体で今やっていることを情報として共有
市民
NPO
各個人が 各個人が 各個人が
アイディアの提案 相互のコミュニケーション 生活者が評価し、改善点を指摘する
意見・アイディアの提供 各自何ができるかの目標を設定する 感想などを率直に発言する
社会的位置の中の市民意識 団体が 団体が
団体が 行政とのつきあい方の勉強 NPOの体力が責任をとれるか検証
1人よがりではない本当の
ニーズの提案
戦略を明示する 利益が出るか
協働すべきか自働かを
深く考える
企画・提案力のUP 採算性など具体的ビジョンがあるか
ニーズを十分に把握する ボランティアに依存しない体制づくり 資金繰りの計画
できるところから実績をつくる 行政と均等の立場で動ける仕組み・力を有する 生活者って代表者?
団体の実績をPRする 協働の中で進路を見失わない
行政に対して提言 行政の予算手続きが頭に入っているか
 グループワークの成果として、上記のような表が完成した。3グループに別れ3つの成果物ができ、参加者は他のグループの成果物に対し質問や意見を付箋に書いて貼り付けていった。赤地に白抜きの文字で記されたセルがその質問や意見である。

グループワークの様子
 2日目は、ここまでで終了。講師から参加者には4週間後に行われる3回目の宿題が提示された。
1つは、午前中行った企画プレゼンテーションを3人の人に実際行ってみるということ、そしてもうひとつは「協働事業の評価に必要な項目を10個考えてくる」という課題であった。

【3日目・平成17年11月26日(土)】
 4週間後に開催した第3日目は、事前の参加予定者38名に対し、18名の参加という結果に終わった。開催直前になってのキャンセルが相次いだ。地域での様々な事業が重複したり、急な仕事が入ったりという理由が多く、次回開催する場合の教訓としなければいけない。

 午前中は川北氏による前回の振り返りと「協働の評価に必要な視点」というテーマで午前10時から正午まで行った。
「協働事業を評価・改善するために」という滑り出しで、事業評価とは、評価より改善のほうが重要であることを講師は説いた。第3者評価に力点をおくよりも情報公開の仕組みづくりを充実させることで第3者評価に変わり、当事者が自分のために自分で評価することの方が事業の改善に繋がるという視点は参加者にとっても目から鱗的な発想であった。
効果的な評価のため4つの点 「視点→配点→採点→改善点」を例にあげ、この“点”を使って午後のワークショップ「協働の評価」へと続いた。

受講生からの質疑に答える川北氏
 昼食休憩後、再びグループワークを行った。宿題で出されていた「協働事業の評価に必要な項目を10個」をそれぞれの参加者が出し合い、グループの中で1つの成果物として仕上げる作業を行った。「協働の評価に欠かさせない視点」=「協働のプロセスに欠かせないもの」としてまとめあげていくことで、事業に対し甲乙をつけて、良し悪しを判断するものではなく、より良い成果を生み出す改善の力をつけるための「協働の評価」として位置づけていくことが、最終日のまとめであった。
 グループワークは2つの班に行われ「協働評価に大切な視点」をそれぞれまとめあげていった。
下記がその成果物である。

協働事業の評価の視点を発表するAグループ

協働事業がうまくいく9つの視点を発表するBグループ
 目的の明確化、協働のプロセスのどこに力点を置き、それを評価・改善していくか…「協働」の道はまだまだ険しいが今回参加した受講生には「協働」に対しての新たな視点が芽生え、それが環境保全の新たな仕組みづくりの第一歩となることを願う。
 川北講師は補足講義と、受講生の質疑応答を経て午後4時に全講座の課程を終了した。なお受講者には、今講座の成果物となる上記の「協働の視点」を書面化したものと、全3日の講座のうち前期と後期の各1日・計2日以上出席した参加者に限り、独立行政法人環境再生保全機構 ・地球環境基金から修了証を送付した。
5. アンケートについて
 アンケートについては最終日の参加者18名に配布し全員に回答していただいた。。
 アンケートの結果に関しては、ほとんどの参加者から、殆どの設問に対し「わかりやすさ・内容」とも「良かった」「とても良かった」がすべてを占めてた。講義やグループワークをはじめ講座全体としても「とても有意義だった」もしくは「有意義だった」と全員の回答者が答えており参加した受講生の満足度が高かった。
 また「今後どのような講座内容に興味があるか」という設問に対して最も参加を希望する声が高かったのは「組織マネジメント講座」であり、組織をどのように動かしていくかという課題を感じているのが伺えた。
 今回のアンケートは出席者の一番少なかった最終日に行ったためサンプルが少なかったことは課題として挙げられる。今後、同様の事業を実施していく場合に再考しなければならない課題となったことを付け加えておく。
6. まとめ 
事業実施の依頼、委託契約の締結から事業実施日までの期間が約4ヶ月という比較的余裕のあるスケジュールで計画していたが、台風14号という予想をしていない事態がおき、参加を予定していた参加者が次々とキャンセルするというなか、様々な意見もありながら実施に踏み切った経緯もあり課題を残す結果となってしまった。またスケジューリングにしても中に4週間インターミッションをおいての実施計画は冒険でもあったが必ずしもいい成果を出せなかったという反省を企画・運営者としてはしなければならない。
 しかしながら、アンケートの結果でもわかるように、参加者からの評価は極度に高く、このような事業があれば再度参加したいとの声も上がっていた。講師の川北氏が、この企画に参加していただいたことで、高い評価を得たこと、そして何より「協働」について深く、広く考える機会を参加者に提供することができたという観点から見れば、今回の事業の目的は達成できたと思う。
 また参加者から「組織マネジメント講座」の開催を望む声が多く、当法人としても機会があれば、今回の講座に引き続き実施したいと考えている。

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