オープニング作品
CHACUN SON CINEMA
【監督】テオ・アンゲロプロス/オリヴィエ・アサヤス/ビレ・アウグスト/ジェーン・カンピオン/ユーセフ・シャヒーン/チェン・カイコー/デヴィッド・クローネンバーグ/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ/マノエル・デ・オリヴェイラ/レイモン・ドパルドン/アトム・エゴヤン/アモス・ギタイ/ホウ・シャオシェン/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ/アキ・カウリスマキ/アッバス・キアロスタミ/北野武/アンドレイ・コンチャロフスキー/クロード・ルルーシュ/ケン・ローチ/ナンニ・モレッティ/ロマン・ポランスキー/ラウル・ルイス/ウォルター・サレス/エリア・スレイマン/ツァイ・ミンリャン/ガス・ヴァン・サント/ラース・フォン・トリアー/ヴィム・ヴェンダース/ウォン・カーウァイ/チャン・イーモウ/デヴィッド・リンチ 2007/フランス/1時間54分 【PG-12】 「あなたにとって『映画館』とは何か、自由なイマジネーションで短編映画を作ってください。ただし、制限時間は3分で・・・」カンヌの歴史を彩ってきた著名な監督たちに手紙が届けられた。カンヌ国際映画祭60回目の開催を記念した一大プロジェクトの始動である。 日本からは北野監督が参加。北野らしいコミカルで、心温まる作品に仕上がっている。中国からはチェン・カイコー、チャン・イーモウの国を代表する2名。子供を題材としたいかにも中国らしい映画である。台湾からも2名の巨匠が参加。ホウ・シャオシェンは歌謡曲、雑踏などを巧みに利用し、時代背景を切り取っている。また自己をたんたんと語っていくツァイ・ミンリャン監督の手法も見事である。香港からは、赤を基調とした欲望と葛藤、モノローグはウォン・カーウァイ監督以外にはいないであろう。東アジアを中心に列挙してみたが、3分間という制限の中で、自分の持ち味を十分に表現できているところは、さすが巨匠といわれる所以であろう。 『映画館』を視点として製作されている本作。これは監督たちが綴った映画館へのラブレターにほかならない。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/6(土)10:30〜、6/7(日)17:50〜
ビクトル・エリセの世界特集
EL ESPIRITU DE LA COLMENA
【監督】ビクトル・エリセ 【出演】アナ・トレント、イサベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス 1973/スペイン/1時間39分 映画「フランケンシュタイン」に深く魅せられた少女アナは、その怪物の精霊が井戸のある一軒家に潜んでいると聞かされる。しかし、そこに出かけた少女が出会ったのは一人の負傷した兵士だった…。 映画自体はそんな物語だが、「ミツバチのささやき」は見ている間、その魅力的な画面で観るものを圧倒する。冒頭の公民館のようなところの映画上映から、線路、汽車、地平線、一軒家、そして学校の子供たち。観客は主人公の住まいの窓の装飾が、あるものに似ていることに気づきハッとするかもしれない。また台詞にまったく頼らずに、画面の連鎖で物語を語る演出力に舌を巻くかもしれない。そしてスクリーンに映る光を顔に受けてささやきあう二人の女の子の愛らしさに心奪われるだろう。 脚本・監督はビクトル・エリセ。日本の映画作家、溝口健二に感銘を受け、映画監督としての困難な道を歩き出したという経歴を持つ。観るものすべての人に深い驚きを残す少女アナはアナ・トレント。彼女は現在も女優を続けていて、昨年も『ブーリン家の姉妹』に出演したばかりである。 80年代にミニシアター系の流れを作った神話的傑作。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/6(土)13:30〜、6/8(月)20:00〜、6/12(金)10:30〜
EL SUR
【監督】ビクトル・エリセ 【出演】オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン 1983/スペイン/1時間35分 スペインの映画作家、ビクトル・エリセが『ミツバチのささやき』で、小さいものに限りなく愛情あふれる視線を注いで監督としての成功を収めたその10年後に、我々に届けられた映画、それが『エル・スール』である。 「宝」という言葉を辞書で引いてみると“その希少さや、美しさゆえに貴重なもの”ということになっている。映画において「宝物」とは小さいものにこそ相応しい。映画で、泥棒が宝物を狙うのは小さいものだからであって、例えば遺跡などが出てきても「泥棒には大きすぎらぁ」ということになる。小さいもの、普段は小さくて眼にさえ入らないようなもの。それを銀幕に大写しにすること、これこそが宝物を見る楽しさ、ひいては映画で宝物を見る楽しさでもある。『エル・スール』で父親が使う振り子が、この上なく魅力的なのはその為だ。小さな宝物を限りなく大きく魅力的に見せること。その他にも、作中の時間の流れをブランコひとつや、移ろいゆく光の加減、自転車の走行などで表現したり、父と娘との決定的な瞬間をスペインの作曲家グラナドスの名曲“エンエルムンド”の秀逸な使い方で表現したりと、映画を見る楽しさにあふれた宝物のような名品。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/7(土)13:30〜、6/11(木)20:00〜、6/12(金)13:00〜
映画は女優で観る!
LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT
【監督】ジャック・ドゥミ 【出演】カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアック、ジーン・ケリー 、 ジョージ・チャキリス、ジャック・ペラン 1966/フランス/2時間7分 1964年に大ヒットしたミュージカル『シェルブールの雨傘』に続いて、フランスの映画監督ジャック・ドゥミが1968年に制作したフランス製ミュージカルの代表作です。軍港の町ロシュフォールのお祭りの季節。旅芸人のエチエンヌ(G・チャキリス)が到着し準備を始めた。そこには理想の女性の人物画を描いている水兵マクサンス(J・ペラン)やアメリカ人の作曲家アンディ(G・ケリー)も来ていた。地元の美しい双子の姉妹で姉のソランジュ(F・ドルレアック)と妹のデルフィーヌ(C・ドヌーブ)は新しい恋の予感を感じている。 ミシェル・ルグランの胸躍る音楽が素晴らしい。また、流れるようなカメラの見事さと、実際のロシュフォールの町に原色の装飾を施し物語の舞台を作り上げた美術スタッフの力量には驚かされてしまう。 三組の恋物語がどういう結末になるかは観てのお楽しみです。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/7(日)10:30〜、6/8(月)13:00〜、6/9(火)15:30〜、6/10(水)17:40〜
【監督】万田邦敏 【出演】小池栄子、豊川悦司、仲村トオル、篠田三郎 2006/日本/1時間48分 とある閑静な住宅街で一家惨殺事件が起こる。犯人の坂口は何の縁もない親子3人を鈍器で殺害。その直後に警察とマスコミに自らが犯人であることを告げ、TVカメラに取り囲まれる混乱のさなかに身柄を拘束される。その模様を偶然自宅のテレビで目撃した京子は、テレビカメラに向かって微笑んだ坂口に一瞬で恋をする。京子は28歳の平凡な独身OL。家族とは疎遠で、会社では同僚たちに都合のいいように利用され、長らく孤独な人生を歩んできた。坂口に自分と同じ境遇を感じ、彼の生い立ちを調べ始める。 逮捕後の坂口は、警察の取り調べに沈黙を貫いていた。国選弁護人の長谷川は何度も誠実に語りかけるが、坂口は心を閉ざしたままだった。初公判から熱心に裁判を傍聴していた京子は長谷川に坂口への差し入れをお願いする。長谷川は戸惑いつつも京子の想いに押され、坂口に差し入れを届ける。やがて京子と坂口は文通を重ねるようになり、お互いがこの世で唯一の理解者と思うようになるのだった・・・・・・。 恐ろしいくらいの一途さで坂口への愛を演じきった小池栄子。テレビで見せる顔とは全く違う彼女の圧倒的熱演を観て欲しい。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/7(日)15:30〜、6/9(火)20:00〜、6/10(水)13:00〜
SUBARU
【監督】リー・チーガイ 【出演】黒木メイサ、Ara、平岡祐太、愛華みれ、前田健、桃井かおり 主題歌:倖田來未/劇中歌:東方神起 2009/香港・日本/1時間45分 ともにバレエダンサーを夢見ていた双子の弟・和馬が病気で命を落とした宮本すばる(黒木メイサ)。絶望の淵で、ふと踏み入れた場末の小劇場のオーナー日比野五十鈴(桃井かおり)との運命的な再会があり、弟のためにも踊り続けることを誓う。バレリーナへの道を歩み、やがてプロになることを決意したすばるは、ライバルたちとともに上海で開かれる国際コンクールに挑戦する。天才バレリーナすばるの成長を描いた曽田正人の人気コミックを『グリーン・デスティニー』を手掛けたビル・コンがプロデュースし、『不夜城』『君さえいれば 金枝玉葉』のリー・チーガイ監督が映画化した。 英ロイヤルバレエアカデミーへの留学経験のある桃井かおりがコーチ役で出演。彼女が太鼓判を押す黒木メイサのバレエシーンは圧巻です。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/6(土)15:30〜、6/8(月)15:30〜、6/9(火)17:50〜、 6/10(水)20:00〜、6/11(木)10:30〜
映画は監督だ! 俊英 是枝裕和!
【監督】是枝裕和 【出演】阿部寛、夏川結衣、樹木希林、原田芳雄、YOU 、寺島進 2008/日本/1時間54分 東京で実際に起きた子供の置き去り事件を元に製作された『誰も知らない』で世界中に家族や社会のあり方を問いかけた是枝裕和監督が、再び家族をテーマに撮った作品である。 そこには映画的な事は一切何も起こらず、長男の命日という少し特別な日に、年老いた夫婦と子供や孫たちのある夏の日が、淡々と描かれている。 かつて開業医を営んでいて、元医者としてのプライドが高く、少し不器用な恭平、その妻とし子は一度も外で働いたことがなく、家庭がすべてという女性である。誰とでも会話のできる気さくな長女のちなみ、亡き長男と昔から比較されることの多い冴えない次男の良多、彼と結婚したばかりで、連れ子を伴ったゆかり・・・。『誰も知らない』に描かれた、深刻で社会派的な内容とは違ったホームドラマである。台詞の随所にどの世代にも共感できる普遍性が織り込まれている。特に樹木希林が扮するとし子と、YOU扮するちなみの掛け合いは絶妙だ。 描かれた家族の良い点、悪い点を、自分の立場に合わせて再確認すれば、さらに味わいが深くなる。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/8(月)17:50〜、6/9(火)10:30〜、6/11(木)15:25〜
映画は監督だ! 名匠シドニー・ルメット!
BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD
【監督】シドニー・ルメット 【出演】フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、アルバート・フィニー 2007/アメリカ/1時間57分 【R-18】 その時間に何が起こるのか、否応無く緊張してしまう印象的なタイトル。物語は、ある兄弟が進退きわまって両親が経営する宝石店に強盗に入るが、失敗し、坂を転げ落ちるように追い詰められていくという緊迫したサスペンス。しかし、実は家族が持つ闇の部分をも描ききったドラマでもある。 『カポーティ』でついにオスカーを受賞したフィリップ・シーモア・ホフマン、イマイチな男性を演じればピカ一の演技派イーサン・ホークが進退窮まる兄弟を熱演。『レスラー』の上映が待たれるマリサ・トメイも見所だ。07年・08年の批評家協会系の賞に軒並みノミネートもしくは受賞、という事実からもその完成度の高さが伺えるが、今年85歳になる巨匠・シドニー・ルメット監督が本気を出せば当たり前かもしれない。なにしろあの名作『十二人の怒れる男』で映画デビューし、『セルピコ』『狼たちの午後』で一世を風靡した作家なのだ。そして注目したいのが脚本のケリー・マスターソン。もともとオフ・ブロードウェイで成功した劇作家で、この作品が映画用脚本1作目、しかし完成は99年だったという。来年〜再来年には次作公開される模様。その破綻無くスリルに満ちたストーリーを堪能して欲しい。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/6(土)19:58〜、6/8(月)10:30〜、6/9(火)13:00〜、 6/10(水)15:25〜、6/11(木)17:40〜
映画は監督だ! 奇才!ベン・スティラー!
Tropic Thunder
【監督】ベン・スティラー 【出演】ベン・スティラー、ジャック・ブラック、ロバート・ダウニーJr.、トム・クルーズ 2008/アメリカ/1時間47分 史上最高の戦争映画を目指して撮影されている映画『トロピック・サンダー』。残虐な銃撃シーン、感動の友情シーンを経ていよいよ映画はクライマックスに至るのだが、どこでどう間違えたか300万ドルの大爆破シーンを大失敗。怒り狂うプロデューサーに、わがまま一杯の役者たち、頭を抱える新人監督。いよいよ撮影中止の危機にまで発展するのだが、妥協を許さぬ原作者は映画を安上がりに済ませるために、役者たちを実際の戦場へと連れ出す。そこに襲い掛かる本当の危険な敵…。撮影用の銃を片手に彼らは、はたして映画のようにうまく切り抜けることができるのか。 近年のアメリカ映画の中でも最高に笑える戦争アクションコメディ。製作・脚本・監督・主演は『ナイト・ミュージアム2』の公開も近いベン・スティラー。彼だけでも暑苦しいのに、そこにジャック・ブラック、ロバート・ダウニーJr.など、さらに暑苦しい役者たちが競演。さらにマシュー・マコノヒーやトム・クルーズが楽しげにゲスト出演。特にトム・クルーズの芝居にはちょっとビックリする。偉いぞ、トム! ほかにも眼を皿にして見てください。とんでもない有名人たちが贅沢極まりない出演をしているから。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/6(土)17:40〜、6/10(水)10:30〜、6/11(木)13:00〜
黒沢清の映画塾1 西部劇魂(※要整理券)
THE WILD BUNCH
【監督】サム・ペキンパー 【出演】ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン、ウォーレン・オーツ 1969/アメリカ/2時間17分 1913年、アメリカの西部時代のほぼ終わりのころ、アメリカからメキシコの国境周辺を舞台に暴れまわったギャング・パイク団。無法者ではあるけれど、非道ではない彼らが時代に追われながらも最後の意地を爆発させる! 冒頭の銀貨強盗から、アメリカ政府の輸送列車からの武器強奪、ラストのメキシコ革命軍との200人対5人の死闘まで、見るものを飽きさせることがないサム・ペキンパー監督の最高傑作。 古典的ウエスタンが、例えばジョン・フォードを例に取ると、最期の決闘のシーンを発砲音だけで表現したり、馬が立てる砂煙であっという間に舞台が全滅していたりなど、ある種「見せない」ことで成立させているのに対し、ペキンパーは、決定的なシーンを見せるだけでなく、スローモーションで時間を引き延ばした。現代の映画にとってこのことは実に大きかったのだ。 ペキンパーといえば、バイオレンス描写に長ける、と画一的に語られるのだけども、映画史的にも重要な存在である。自主規制などという言葉の下に再び映画表現が平板化されていく中、今『ワイルドバンチ』を劇場で見る意義は極めて大きいと思う。 ●上映日程:宮崎キネマ館 6/12(金)15:30〜 ●映画塾講師(予定) 黒沢清監督
黒沢清の映画塾2 西部劇魂(※要整理券)
SEARCHERS 2.0
【監督】アレックス・コックス 【プロデューサー】ロジャー・コーマン 2007/アメリカ/1時間36分 ☆上映前に特典映像『Alex Cox is Back!』(15分)を上映します。 映画。それは、止め処なく人を興奮させ、饒舌へと誘う20世紀最高の発明、それは限りなく至福の瞬間…。 とまぁ書き出してはみたが、実際のところ、そんな人間は絶滅危惧種だ。その他大勢の人にとっては映画の何がそんなに面白いのか、理解に苦しむだろう。まぁよい、21世紀初頭の映画とはそんなもんだ。大人だからそこは割り切って生きていこう。 しかしここに、そんなことは露程も思わない子供じみたB級西部劇役者の二人が出会う。彼らは子役だったころ、酷い扱いを受けた脚本家をブン殴るために、西部劇の聖地<モニュメントバレー>へと旅に出る。道中、ひたすら繰り返される、映画の話。なぜかこのしょうもない旅に付き合わされることになった一人娘にとっては、この会話が苦痛でしょうがない。「他に、話、ないの?」。そんな非難を無視して、それでも映画の話は繰り返されていく。さてこののんき者たちの復讐は成功するのだろうか? 「結末は見ていない君のために教えないよ」。出演は…、実はよく知らない人だ。だがそれが何だというのだ。見れば全てのことを肯定する気合が漲ってくる。監督アレックス・コックス、久しぶりの劇場長編は西部劇(ただしコメディ)だ! ●上映日程:宮崎キネマ館 6/12(金)19:00〜 ●映画塾講師(予定) 黒沢清監督
【黒沢清の映画塾】整理券の注意事項 ※6月12日(金)10:00より宮崎キネマ館にて整理券を配布します(限定100枚)。 ※整理券は映画祭のチケットをお持ちの方にお渡しします。 ※映画塾1と映画塾2は別々の整理券になります。 ※映画塾1と映画塾2の2作品をご覧になる方は、一般券は2枚、フリー券は1枚が必要です。 ※整理券は映画塾1と映画塾2ともに同じ列でお渡しします。 ※整理券はお一人様最大2枚まで(映画塾1と映画塾2の整理券を1枚ずつ)。 ※上映時間の15分前には映画祭会場へお越しください。
頑張っている全ての人へ
【監督】黒沢清 【出演】香川照之、小泉今日子、役所広司、津田寛治、井川遥、小柳友 2008/日本、オランダ、香港/1時間59分 08年のカンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門審査員特別賞を受賞、さらに先月、香港国際映画祭にてアジア・フィルム・アワード作品賞・脚本賞を受賞し、全米での興行も始まった本作である。 この映画の魅力とは何だろう?それは、多くの人の共感を呼んだ点ではないだろうか。リストラされ、他の場所では何も出来ないことを思い知らされる父親、ここではないどこかへ行こうとする息子たち、そして彼らを見つめ続ける母親。近所にいそうな家族の、想像もつかないどたばた劇。その姿は、現実の生活がはらむ不確実さを目の当たりにするようで恐ろしいのだが、映像はなぜか可笑しく切ない。特に不況の折、誰もが直面し得る境遇を真摯に演じた父親役・香川照之の姿は涙モノだ。また、夫と息子たちの間に佇む母親役・小泉今日子の揺れ動きながらも芯のある姿は頼もしく、米軍への入隊を勝手に決めて独立していく 兄役・小柳友、同じく勝手にピアノを習い才能を開花させる弟役・井之脇海もそれぞれピタリと嵌っている。国際派脚本家・マックス・マニックスのテイストと、昨今のジャパン・ホラーの礎を築いた黒沢清監督の映像が見事な融合を果たしているのも見逃せないポイントだ。 ●上映日程:宮崎市民プラザ オルブライトホール 6/13(土)17:00〜 ●ゲストトークショー(予定) 【監督】黒沢清 【プロデューサー】木藤幸江 [日本語字幕] [英語字幕] [副音声] [手話]
明日を信じる全ての人へ
【監督】是枝裕和 【出演】Cocco 2008/日本/1時間47分 『歩いても歩いても』を手掛けた是枝裕和監督が、「強く儚い者たち」等のヒット曲で知られるCoccoを追ったドキュメンタリー。 沖縄の米軍基地移設予定地に戻って来たジュゴンに捧げる唄をうたい、ジュゴンの事を語るCoccoの姿に動かされた是枝監督。ライブツアー、青森県六ヶ所村の核再処理施設、生まれ育った沖縄で暮らす子供との生活と、彼女の人生の旅に同行し、その姿をカメラに収めていく。 米軍基地問題、リゾート開発の為に壊されていく自然、忘れさられようとする戦争の記憶、観光地として人気を誇る沖縄の光と影。沖縄を愛する沖縄の女として、これまで沖縄の為に唄ってきた彼女が、その旅の中で忘れてはいけない、知っていなくてはならない出来事がある事にたどり着く。自分でも持て余してしまう程の強い思いを唄に込め、唄で何が出来るかわからないけど、何が起こっているのかただ知ってほしいからと彼女は唄う。この唄が誰かに届くよう、そして何かが変るようにと祈りながら。 彼女は、私たちは、この旅の果てに何を見るのか。焼け野原に花が咲くようにと祈り、希望を追い求めるCoccoの終わりなき旅の物語。 ●上映日程:宮崎市民プラザ オルブライトホール 6/13(土)14:00〜
宮崎〜台北線就航一周年記念事業
Cape No.7
【監督】魏徳聖(ウェイ・ダーシェン) 【出演】范逸臣(ヴァン・ファン)、田中千絵、中孝介 2008/台湾/2時間13分 主催:宮崎文化本舗 協賛:宮崎空港振興協議会 ※この事業は、財団法人空港環境整備協会の助成を受けて実施しています。 ※特別企画のため映画祭定員枠は300席となります。 ミュージシャンになる夢を諦め台北から故郷に戻った阿嘉(アカ)は、郵便配達の仕事に就く。が、いつもトラブルばかり。そんな中、日本人歌手・中孝介のコンサートが地元で開かれることになる。しかも前座バンドは住民で結成することに。仕事で滞在していた日本人モデルの友子がバンドの取りまとめを任され、阿嘉を含めた6人が即席バンドのメンバーとして選ばれる。 ある日、阿嘉は「海角七号」という今はない住所に宛てた日本からの小包を見つける。中には、終戦直後に台湾を離れた日本人教師が台湾の女性に宛てて書いた7通のラブレターが入っていた。この手紙をきっかけに、反発しあっていた阿嘉と友子は深い絆で結ばれていく・・・。 ホウ・シャオシェン監督が「こんな台湾映画を待っていた」と絶賛した本作。 監督は本作が商業長編映画デビューとなる魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)。主演の范逸臣(ヴァン・ファン)ほか、その道で有名なミュージシャンが、バンドメンバーで出演している。 日本を代表するミュージシャンとして中孝介が本人役で出演。日本人教師役との2役を、映画初主演にして見事に演じている。また田中千絵が、北京語を駆使し、体当たりの演技でヒロイン友子を演じきっている。 台湾南部の海辺の町、恒春(ヘンチュン)で繰り広げられる、60年の時を越えた珠玉のラブストーリー。鑑賞後は、ほんのり甘くて飲み口爽やか、後味すっきりの「馬拉桑」で乾杯。 ●上映日程:宮崎市民プラザ オルブライトホール 6/13(土)10:00〜 ●ゲストトークショー(予定) 【監督】魏徳聖(ウェイ・ダーシェン) 【俳優】范逸臣(ヴァン・ファン) 【女優】田中千絵 [日本語字幕] [手話] [要約筆記] ★この作品は台湾 群体娯楽/果子電影の協力により今回の日本上映が実現しました。